三浦綾子文学 語句索引(製作中)
そのトセの死を思い出すことさえ、信夫には恐ろしかった。そして、信夫にとって死というものは、突如見舞うものとしてしか感ずることができなかった。長いこと病気をしていて、次第にやせ細り、苦しみ、そしてやがて死んで行くという死があることを、信夫には考えることができなかった。信夫はたまに、くらがりの中でうしろをふり返ることがあった。突如として死神が自分を捉えはしないかという恐怖におそわれるからであった。
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