「茶道教授 藤戸ツネ」と書いた看板のかかっている黒塀の門をはいるとき、恵理子はふり返らずにはいられなかった。再び青年が恵理子を見つめていた。恵理子は思い切って会釈をした。青年が軽く手をあげた。ただそれだけのことだった。が、恵理子の胸は急にふくらんだ。その青年には、いままで誰にも見たことのない何かがあった。それが何であるかを、恵理子は正確に言いあらわすことはできなかった。
〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
「茶道教授 藤戸ツネ」と書いた看板のかかっている黒塀の門をはいるとき、恵理子はふり返らずにはいられなかった。再び青年が恵理子を見つめていた。恵理子は思い切って会釈をした。青年が軽く手をあげた。ただそれだけのことだった。が、恵理子の胸は急にふくらんだ。その青年には、いままで誰にも見たことのない何かがあった。それが何であるかを、恵理子は正確に言いあらわすことはできなかった。
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