『果て遠き丘』[ 春の日 ](九)15 保子に逃げられたくや……

保子に逃げられたくやしさもあって、容一は、保子の出たあとすぐに扶代を家にいれたのだが、まもなくその扶代にも、気にいらないところが見えてきた。同じ靴下を何日はいていても、扶代は替えてくれようとはしなかったし、床の間の花がとうにしおれていても、気づかないこともあった。風の日など、廊下がザラザラと埃っぽくなっていても、扶代はいっこうに気をつかわなかった。すると妙なことに、容一のほうで、扶代のすることが気になりだしたのだ。


〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463

関連記事

  1. 『果て遠き丘』[ 蛙の声 ](六)19 (やっぱり香也子さん……

  2. 『塩狩峠』[ かくれんぼ ]303 「けんかなら、俺だっ…………

  3. 『塩狩峠』[ 菊人形 ]79 「変な子!」……

  4. 『果て遠き丘』[ 影法師 ](一)58 「そうね。わたし、章……

  5. 『果て遠き丘』[ 蔓バラ ](三)26 金井は白い健康な歯を……

  6. 『塩狩峠』[ 鏡 ]3 祖母のトセがこういう……

カテゴリー

アーカイブ