ときどき蛙の声が途切れると、神居古潭に向かう山間の国道を通る自動車の音が遠い山鳴りのように聞こえてくる。十五畳のリビングキッチンに、香也子がひとりテレビを見ていた。容一も扶代も、奥の間に珍しく早く引っこみ、台所で章子がパウンドケーキを焼いている。その香ばしい香りが居間にも漂っている。章子の結婚は十月と決まった。パウンドケーキの香りに、香也子は章子がどんなに幸せな思いでケーキを焼いているかを思った。
〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
ときどき蛙の声が途切れると、神居古潭に向かう山間の国道を通る自動車の音が遠い山鳴りのように聞こえてくる。十五畳のリビングキッチンに、香也子がひとりテレビを見ていた。容一も扶代も、奥の間に珍しく早く引っこみ、台所で章子がパウンドケーキを焼いている。その香ばしい香りが居間にも漂っている。章子の結婚は十月と決まった。パウンドケーキの香りに、香也子は章子がどんなに幸せな思いでケーキを焼いているかを思った。
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