『果て遠き丘』[ 影法師 ](九)6 容一が香也子をかわい……

容一が香也子をかわいいといっても、その愛さえも、香也子は信じていない。本当にかわいいのなら、どうして父と母は別れたのかと思う。父と母が別れたのは、つまりは子供より自分がかわいかったからではないかと、香也子は嘲笑したくなるのだ。男と女の愛も信じられない。この世に、いやというほど離婚があり、失恋があるというのに、どうして人々は、愛だの、恋だのと騒ぐのだろうと、香也子は思うのだ。いまは子殺しの時代だという。自分自身の身勝手な都合で、子供さえ殺す。そんな人間に、何が愛だ、何が恋だと、香也子は怒りさえ感ずるのだ。香也子には誰も信じられない。それなのに、いま見たテレビドラマは、継子継母が、お互いに思いやるドラマだ。馬鹿馬鹿しくてテレビを切った香也子に、章子は、


〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463

関連記事

  1. 『塩狩峠』[ かくれんぼ ]220 信夫は小指を出した。…………

  2. 『塩狩峠』[ かくれんぼ ]70 「おかあさま。あした……

  3. 『果て遠き丘』[ 蔓バラ ](五)23 「おとぼけじゃないよ……

  4. 『塩狩峠』[ 桜の下 ]113 「知らないのか? 高……

  5. 『果て遠き丘』[ 蛙の声 ](四)89 保子はうなだれた。ま……

  6. 『塩狩峠』[ 桜の下 ]35 と言った。……

カテゴリー

アーカイブ