『果て遠き丘』[ 蛙の声 ](六)3 独り言をいいながら、戸……

独り言をいいながら、戸棚をあけてみた。が、そこにもない。もしかしたら、自分の部屋に持って上がったのだったかもしれないと、章子は自分の部屋に戻って電灯を点けてみた。が、八畳の章子の部屋はきれいにかたづいていて、畳の上にも、片隅の朱色の文机の上にも、桐のタンスの上にも、鏡台の上にも、パウンドケーキらしいものはない。


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