容一は腹這いになってタバコに火をつけた。扶代は枕に頬をつけて、その容一を黙って見ていたが、十八年も前に死んだ、前夫加野守の顔を思い浮かべた。いつものことだった。容一に抱かれると、扶代は反射的に加野を思い出すのだ。加野に対して、いまだに罪を犯しているような気がしてならないのだ。加野は一度だって、自分が他の男に抱かれる姿を想像したことはなかっただろうと、扶代は思う。加野は小さな商社に勤める実直な会社員だった。これといった道楽もなく、ただ少し酒をたしなむ程度だったその加野が、ある夏の夜、突然、
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