金井としては満足すべき縁だと思っていた。その二人の間に、香也子がちらちらと姿を現すようになった。時折香也子は、予告もなしに塾に現れることがある。そんな香也子の動きを、どう受けとめるべきか、金井はそのたびに迷った。車の中で接吻を求められたことも、気まぐれといえば気まぐれに思われた。しかし、真剣と思えば真剣とも思われた。若い娘の行動はいつもそんなものだ。今夜のことだって、どこまで本気なのか。金井は警戒しながらも、心のどこかにひそかな期待があった。
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